6月12日は県民防災の日。それに合わせて各市町村では防災訓練を実施していると思いますが、皆さんはその防災訓練に参加したことがありますか?

実はワタクシ、大きな声では言えませんが、地域の防災訓練に参加したことがないんです。だって愛犬2匹を連れて避難訓練の場に行ったら「え?」って顔されそうでしょ。残念ながら防災訓練の案内が来ても「ペットも一緒に参加できます」なんて書いてあるのを見たことがない。しかもご近所さんとも交流がないし、もともと人見知りする方なのでなんだか行くのも気がひけて…。と、結局毎年「参加した方がいいのだろうな」と思いつつ「でももしもの時は愛犬と車に避難だな」なんて考えておりました。

そんな私の所へ利府町にある「オノデラ動物病院」から小学校で行われる『ペット同行避難訓練』の案内が届きました。LINEで登録者に一斉配信されたものではありますが、利府町以外の人でも参加できると書いてあります。こんな機会、滅多にない!
ということで愛犬1号&2号と共に『同行避難訓練』を体験してまいりました。

総合防災訓練にはたくさんの人が参加していました

同じ校庭に設けられたペット同行避難訓練エリア

会場となった小学校に着くと広い校庭を使って子供たちが防災訓練をしています。その校庭の一角にテントを張ってペット同行避難訓練のエリアが設けられていました。

受付を済ませた後、マイクロチップの確認、そしてアンケートへと進みます。簡単なアンケートでしたが、それに答えながら日頃の備えに関して自分はやれているのかどうか、同じように犬や猫を飼っている人はどうしているのか、などを確認。

マイクロチップの確認は一瞬だけど登録番号って覚えてないことに気づく。どんなときでも確認できるように番号をどこかにメモしておかないといけないですね

皆さんの答えは??

筆者、家族の具合が悪くなった時、救急車を呼ぶための電話番号119が分からなくなった経験あり。アクションカード、緊急連絡先の表記、大事ですね

小さな気づきをいろいろと感じながら、次は体験コーナーへ。まずは避難所を想定して用意されたクレートに入る体験をしました。自宅のクレートとは違う形、違う匂いのクレートに入れるのか不安でしたが、おやつで誘導したらすんなり2匹とも入ったのでちょっと拍子抜け。しかし普段は別々のクレートで留守番をしている2匹なので、一緒のクレートに入ることを厭わないことが分かり少しホッとしました。

様々なケージやクレートが用意されていました

愛犬1号&2号 一緒に入れました!

秋田犬のカイくんもクレート体験大成功

残念ながらペットと一緒にいられる「同伴避難」は周りの人の理解云々だけではなくアレルギー問題やペットにかかるストレス、またペットを連れていることで周りの目を気にする飼い主のストレスなど様々な観点から実施するは難しいことなのかもしれません。「同行避難」ができる地域では人とペットが別々の場所に避難所が設けられます。「一緒にいられないのはかわいそう」そう思いますが、クレートという囲われたスペースが落ち着く場所と思えるように普段から慣らしておけば、ペットのストレスは軽減されるそうです。時々ペットホテルに預けたり、犬友の家のクレートを借りて、中に入るゲームを楽しんだりしながら分離不安にならないよう、慣れさせておくのも良いかもしれませんね。

次に体験したのは「係留」。災害時、いったん安全な場所にペットを係留(つなぎ留めること)しておければ、避難準備が効率よく行えます。ペットのリードを持ったまま、もしくは抱っこしたままだと自分の行動に制限がかかってしまうので係留することも大事な行動の1つのようです。同行避難ができるとされている地域でも災害後すぐにクレートが並んだペットの避難所ができるとは限らない。そういった時にも係留してペットが落ち着いていられることが大事になってくるそうです。

体験した時はフェンスに2匹を係留した後、姿を隠すように指示されました。飼い主が見えなくなった時の愛犬たちがどんな行動をとるのか。吠えたり暴れたりしないかスタッフが観察。少し時間を置いて戻るとその場を担当していた獣医師さんから飼い主が見えなくなったら2匹がお互いを頼るように近づいて、おとなしく待っていたと教えてもらいました。普段家では寄り添うことはしない2匹なのでそんな一面も確認でき、更に愛おしくなってしまいました。

2匹離して係留(上)飼い主が見えなくなると…(下)

体験の後は避難時における注意や準備しておくと良い物などのお話を聞きました。非常持ち出し袋は何個かに分け優先順位をつけておくと良いそうです。①絶対持ち出さなきゃならない物②あったほうが良い物③絶対じゃないけどあると役に立つ物といった感じでしょうか。そして1人の時は①をもって、2人でいる時は①と②をそれぞれ持って避難するという具合に決めておく。

それからいつも飲ませている薬などがある場合は、台所などに置いておくのではなく持ち出し袋の中に入れておき、そこから毎日取り出すようにしておくと良いそうです。これは人間の薬も同じですね。またペットと一緒に行動する場合はどうしても動きが鈍るので、例えば大雨の予測がつく時は前の日からペットと共に雨の降らない地域に車で出かけてしまうというもの飼い主として考えておくと良いそうです。

その他にも最低3日分の食料や水はいつでもすぐに持ち出せる玄関に準備しておくこと。猫や小型犬であれば両手が空くペットリュックを用意しておき、日ごろからそこに入る練習などをしておくことなど様々なアドバイスを会場にいる獣医や動物看護師、しつけのインストラクターなどプロの方々から聞くことができました。

特別な物ではなく100均などで手に入る物を犬用にアレンジすることもできると教えていただきました

参加したわんちゃんファミリーには資料やグッズなどが配布されました

最後にペットと一緒に煙が充満した部屋を歩く「濃煙体験」をしました。人間だけならともかく、ペットと一緒にというのはなかなかできない体験ではないでしょうか。

煙が充満した所に果たして犬は入って行けるのか…。見ていると案外平気そう。中には入りたがらない犬も勿論いましたが、多くの犬はすんなりと入っていきます。そして出口で待っていると慌てることなく堂々と出て来る。飼い主が後ろに続いて出てくるので、なんだか「ついてこい!」と犬が言っているようで、その表情が誇らしげにさえ見えました。

愛犬と共に濃煙体験

初めての経験に動じないわんちゃんたち

凛々しくもあり(上)可愛くもある(下)

同行避難訓練は県内では実施している所が少なく、今回参加した利府での同行避難訓練は5回目ですが、まだあまり知られていないようです。この日は犬25匹、猫2匹が参加していましたが、お話を伺うとほとんどの方が初めての参加だとおっしゃっていました。2市3町(塩竈市、多賀城市、松島町、七ヶ浜町、利府町)の宮城県獣医師会に登録している動物病院が中心となり今後はさらにSNSを使って『同行避難訓練』への参加を呼び掛けていこうと考えているそうです。『同行避難訓練』はペットと飼い主の避難訓練が第一目的ですが、その他にペットを飼っていない一般の人にもペットとの避難を理解してもらいたいという思いもあるそうです。住んでいる地域に関係なく誰でも参加できますので、ぜひ来年は皆さんもお友達と一緒に参加してみてはいかがでしょうか。

お友達同士で参加したジャックくん(上)17歳と後ろ足の筋力が弱まってきたため歩行器を使用しているくるみちゃん(下)19歳。
同行避難訓練に初めての参加。「防災に対する意識が変わりました」

チャコちゃん(3歳)初めての参加。「災害時、近くに同行避難できる避難所が必ずできるかはわからないと言われ、自分がこの仔を守るためにどうすれば良いか勉強になりました」

りくくん(7歳)友達に誘われて初めて参加。「係留体験では吠えてしましたがいい経験になりました」
 
レオくん(1歳)初めての参加。「家ではクレートが好きですがここでは入るのに少し手間取りました」

茶々くんも同居している秋田犬のカイくんと避難訓練に参加。「普段はカイより強い茶々ですが、静かにクレートに入って待っていてくれました」

「ペットために避難所に行かず、飼い主が体調を崩してしまったらそのペットたちのお世話は誰がしれくれるのか。まずは被災しても自分が元気で健康でいることがペットを守る飼い主として一番大切な事だということを頭に置いて、孤独な避難生活を送らないようにご近所さんやペットを通じた友達などとのコミュニケーションを図るようにすること。さらに日頃からペットの性格を見極めておくこと。災害時に備え、ペットと遊びながら訓練をしておくことが大事」という話を聞き、犬2匹の飼い主である私の意識も変わり始めました。
(取材:NAOKO)

ペット同行避難訓練
宮城県獣医師会中央支部塩釜班(オノデラ動物病院花園動物病院)
NPO法人アナイス宮城山形支部
利府町総務部 危機対策課(日時などは利府町のホームページでもご確認いただけます)

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