本誌主催のイベント「ペットフェス2024春」に出店してくれたさかがみ家のキッチンカー。今年1月13日、千葉県からスタートし日本全国47都道府県すべての地域を回り、5月6日三井アウトレットパーク木更津内にできた sakagamike cafeで最後の出張販売を行った。

このさかがみ家キッチンカーのハンドルを握り一人で全国をまわったのが俳優であり、動物保護ハウス「さかがみ家」スタッフでもある古山憲太郎さん。松島のイベントでも2日間、会場内のテントで休む間もなく来場者の対応に追われていた。ひとりひとり丁寧に接し、グッズの販売だけではなく写真やサインのお願いに応え、時には来場者のわんちゃんを抱っこしながら会話をしてくれた古山さんの姿は記憶に新しい。

『ペットフェス2024春』にて

そんな古山さんに出張販売終了直後の5月某日、都内で話を伺った。
単刀直入に、やり終えた今の気持ちをお聞かせください。
「うーん、達成感というよりも…これまでの毎日がとても充実していたので今はちょっと気力がないというか、燃え尽きた感はありますよねー」
飾ることなく正直な今の気持ちを話してくれた古山さん。6月からは舞台の公演も決まっていて、帰ってきた早々に稽古が始まっているのだが気持ちの切り替えがうまくできていないのだと言う。

燃え尽きた感じと話す古山さん

さかがみ家代表の坂上忍さんとは14、5年前からの付き合いで、その頃はお互い役者として接していたそうである。坂上さんは自分と同じ血液型であるAB型の古山さんを面白がり、当時から屈託なく接してきていたそうだ。そんな坂上さんがお昼の番組のMCをやっていた頃、少し疎遠になっていた時期もあったのだが、その番組が終了となる半年位前に犬や猫の保護活動をするので手伝ってほしいと連絡があったのだそうだ。正直に言うとそれまで動物のお世話をしたことがなく、自分に務まるのか不安だったそうだ。だが坂上さんから役者の仕事も続けていいと言われ、「逆に」役者以外の所で役に立てるのであればと2022年の4月、さかがみ家の初期メンバーとして活動に参加することとなった。

それからの古山さんはテレビ番組で紹介されている限り、不器用で頼りなく、すぐ泣くダメなおじさんという印象。何かにつけ怒られ「そりゃダメだわ」とみているこちら側も他のさかがみ家スタッフに感情移入してしまい、なんとも歯がゆく、それでいて放ってはおけない人というイメージで古山さんを捉えていた視聴者も少なくないのではないだろうか。

一方、寄付やクラウドファンディングに頼らずに保護活動を”仕事”として捉えているさかがみ家では、オリジナルグッズの販売による収益を運営に回すということを始めた。そんなある日、代表自ら発注ミスを犯し大量のアパレル商品が部屋を埋め尽くすという大事件が起こる。そのさばききれない大量の在庫とあまり活用されていないさかがみ家のキッチンカーの存在が気になった古山さんは坂上さんにキッチンカーでグッズを売りに行くのはどうだろうかと提案した。

それからわずか3カ月ほどの準備期間で古山さんが一人で行く「全国出張さかがみ家」がスタートとなった。

古山さんの相棒となったさかがみ家キッチンカー

当初の事を古山さんはこう振り返る。「最初の頃はキッチンカーを置かせていただくお店やルート、宿泊先など全て一人で調べて行動していたので不安でしかなかったですね。1週間ほどやってみて全国を回って販売することを成し遂げるのは成功率30%くらいじゃないかと思いました」
そして最初は「売る」ことに重きを置いて毎日の経費と売上ばかりを心配していたそうである。
少し経つと「全国出張さかがみ家」のバックアップ体制が整い、本拠地にいるさかがみ家スタッフと連携を取りながら進むことができるようになってくる。そして毎日の行動に慣れてきて、古山さんの気持ちにも余裕がでてきた頃、坂上さんからあるアドバイスを受け取った。

最優先にすることは、来てくれたお客様に丁寧に接し、楽しんで帰ってもらう事。

それは実際に期間限定カフェなどで坂上さん自身がやってきたことだった。

それまで売り上げを気にしていた古山さんだったが、このアドバイスにより意識が変わり来てくれた一人一人に真摯に向き合うようになっていく。そして実際に古山さんに会った全国の人たちから「神対応」と称され、行った先々ではたくさんの励ましの言葉や差し入れなどをいただくようになってゆく。自分の行動が相手を介して自分に戻って来ることを体現した古山さんは、毎日感謝を忘れずに各地を回っていたそうである。

最初の頃は不安だったという古山さん

最初は全国制覇の成功率が30%程という不安いっぱいの古山さんだったが中盤の九州地方に差し掛かった頃、100%達成できるという自信に変わっていったそうだ。それはもちろん慣れもあるのだが、出張さかがみ家のキッチンカーと自分を待ってくれている人がいるということが大きく作用したのだろう。その後沖縄で熱中症になり夕方から体調を崩したこともあったが翌日には完全復活しそれ以降病気らしい病気にかかることもなく順調にコマを進めていった

4月13日松島のペットフェスへ出店するため宮城県松島離宮へ到着。着くとすぐに早めに来ていたイベント来場者に声を掛けられ笑顔で写真撮影に応じていた。

全国を回った古山さんなので宮城県に来た時のことを覚えているか聞いてみた。すると会場内の素晴らしい景色やほとんどの来場者が犬を連れてとても好意的に来てくれたことなどはっきりと覚えていると話してくれた。

『ペットフェス2024春』にて

「ペットフェス2024春in宮城県松島離宮」は2日間にわたって開催された。朝9時のオープンと共にたくさんの人が入場し撮影会の受付や愛犬の洋服、グッズ、おやつなどそれぞれお目当てのブースに進んで行く。どのブースも大盛況だったが特にさかがみ家ブースは列が途切れないほどの盛況ぶりだった。会場内には車両が入れないため、テントでのグッズ販売となったさかがみ家ブースだったが、より近くで会話をしながらサインや撮影に応じてくれている古山さんを見ていて多くの人が並ぶことに抵抗なく自分の番が来るのを楽しみにしているように見て取れた。そして自分の番が終わると皆笑顔でテントから離れていく。

『ペットフェス2024春』にて

その時のことを古山さんに聞いてみた。グッズを販売しながら一人一人に丁寧に接して疲れなかったですか。すると「どの会場でも行った先々で生の声を聞くことができ、それぞれの家庭やペットとの絆、ファミリーとして共存しているリアルな関係などを知ることができ、疲れるというよりも充実感を覚えました」と話してくれた。「むしろ売るものが不足していて申し訳なかったと思います。それでも並んでくれてありがたかったですね」だから一人一人と話をしたりサインや写真をとったりすることは当然のことという思いでやっていたそうだ。

『ペットフェス2024春』にて

宮城を後にした約3週間後、最後の出張販売のため千葉県木更津市のアウトレットにできた「sakagamike café」で準備をしていた古山さん。1月13日に千葉県からスタートしたった一人で全国を回り、ようやく5月6日に最後の日を迎えようとしていた。いつもと同じように準備していた古山さんだったが、それまで成し遂げた充実感と終わってしまう寂しさと、頑張って売り上げてきた達成感といろいろな思いが一気に押し寄せて、急にこみあげてしまったのだそうだ。一人で運転し、商品を並べ、お客様と接し、販売終了後は在庫の確認や売り上げの計算、入金や両替などを済ませまた次の場所へ。そんな事を100日以上も毎日行ってきた。それが今日で全て終わるということに測り知れない複雑な思いが溢れるもの当然である。その時のことを話してくれている目の前の古山さんの目も潤んでいるようで、こちらまでつい目頭があつくなってしまった。

「今後は本職の俳優業も続けながら、さかがみ家のカフェやさかがみ家での保護活動を続けていきます。
最初は不慣れで失敗も多かったのですが、キッチンカーで全国を回りながらたくさんのご家族やワンちゃんたちと触れ合ううちに、動物が好きになっている自分に気づいたんです。だから僕みたいな人間が仕事を続けながらでも保護活動に参加することはできるんだということをもっと皆さんに伝えていきたいですね」キッチンカーを降りた後の事をこのように話してくれた。

最後に、もしもう一度「全国出張さかがみ家 第2弾」をやることになったら行きますか?と聞いてみた。すると迷わずに「今度は販売するグッズを充実させて行きたい」と答えてくれた。「今回はだいぶ皆さんの欲しがる物が無くなってしまいご迷惑をおかけしましたので、次はワンちゃんの首輪やネコちゃんのグッズなどももって…今いろいろと新しいグッズなども考えているようなのでそれが商品化する来年とかにまだ皆さんに会いに行きたいですね」と嬉しい答えを聞かせてくれた。「ただ、キッチンカーがLPガス仕様で、それを補充できるところがどんどん減っているのでそれだけが気がかりですけどね」

まさか全国を回ることになるとは考えられてなかったであろうさかがみ家のキッチンカー。次はLPガスのあるガソリンスタンドの近くの場所でお店を広げられることを祈るばかりだ。

久しぶりにお会いした古山さんは燃え尽き症候群と言っていたが、その顔つきは疲れをひきずっている様子もなく、むしろ普通の日々に物足りなさを感じているように見えた。全国を旅し毎日が充実していたという古山さん。またどこかでお会いできるように期待を込めつつ、俳優・古山憲太郎が仲間の待つ稽古場へと向かっていくのを見送った。(取材:NAOKO)

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プロフィール
古山憲太郎(フルヤマケンタロウ)
1976年 東京都出身 俳優
23歳で劇団「モダンスイマーズ」に旗揚げから参加。
舞台・映画・ドラマなど活動の幅は多岐にわたる。
2022年よりさかがみ家にて犬・ねこの保護活動に初期メンバーとして参加し
今年さかがみ家キッチンカーにて出張販売をしながら全国制覇という偉業を成し遂げる。
6月30日まで池袋芸術劇場シアターイーストにて「雨とベンツと国道と私」を公演中。

最後にARCHE! N°23の表紙撮影に快く応じていただきました。ありがとうございました。

ペットフェス2024春より

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