テーブルの上に鎮座していたのは真ん丸な体がとても愛らしい白猫のドールだ。それも双子のように2体が並んでいて「よく来たね」と迎えてくれているかのよう。とてもふくよかでこの世を達観しているような表情は、神に近い存在のようにも見えてくる。悪しき心があれば見透かされ、緊張や不安、恐怖に苛まれた時には暖かく見守り心に安らぎを与えてくれる。

よく来たね、と歓迎してくれているかのような白猫ドール

そんな不思議なパワーを秘めていそうなこの白猫のドールを作ったのは、さんけさん。本名武田ひろみさん。とてもチャーミングな方で初めてお会いしたのに前から知っていたかのような、親近感がわく女性だった。「手の関節動くから色々ポーズ作ってもいいよー」と気さくに言ってくれるのだが恐れ多くてなかなか手を延ばせない。

作品から受けた印象を読者に伝えたくて何枚も写真に収めていると「こういうのもあるよ」と全然違うタイプのドールを出してきてくれた。吸い込まれそうな瞳を持つ猫ドール。

どの猫も口を開き何かを話しているかのよう

「ガラスで作った目を入れると命が宿るよね」との言葉通り、その目は何かを捉えているようにも見えてくる。先程の真ん丸な白猫ドールとは違いこちらは全ての関節が動くようになっていて抱っこした時の感触がよりリアルに感じられるようだ。

「小さいのも見てみる?」とまた別のドールを出してきてくれたサービス精神旺盛なさんけさんが木の粘土と石の粘土で作り上げるこの「球体関節人形」猫ドールを作り始めたのは20年以上も前なのだそうだ。

こちらは手のひらに乗るくらいの小ぶりな猫ドール どれも和柄の素敵な衣装を身にまとっている

1998年 初めて出品した仙台エスパルアート展で賞を受ける。これをきっかけに翌年には個展を開き、その後も意欲的に展覧会に出品し数々の賞を受賞。また多くの個展を開く機会にも恵まれ県内外で高い評価を受ける。手先が器用なのはもちろんだが、発想力や完成形を思い描く想像力など作家としての才能に恵まれているのだろう。そして何より作ることが大好きなのだ。

実はさんけさんの造形作家としてのルーツは日本画にある。1991年に日本画を描き始め翌年には河北美術展で入選を果たす。その後も石巻美術展や石巻日本画展などの公募展にに出品し評価を得ていたのだが、ある時自分の中で次のステップへ進みたいという意欲が湧いてきたそうだ。そこで今度は立体造形に挑戦するため先生について球体関節人形の作り方を一から学んだ。初めの頃は日本画を描いていたせいか立体的な人形もどこか平面的だと指摘されたこともあったそうだが、真綿のように技術を習得し、さんけさんらしい個性的なドールを作るようになった。

こちらはさんけさんの守り神

2011年 生まれ育った矢本町(現東松島市)の家が東日本大震災で半壊となる。多くの作品を失うが、創作意欲は絶えることがなく後に自然豊かな蔵王町に移住し、現在もそのアトリエで猫ドールを製作している。

5年ほど前から造形作家としての顔をもつ傍ら、パン職人として週に2日だけ、水曜はベーグルを、木曜は食パンを作り販売している。「おばちゃんだからSNSとかわからないの」というさんけさんはネット上ではほぼ知られていないが、地元のマルシェに出店したのをきっかけに口コミでファンが買いに来るようになったそうだ。

大人気のベーグルは多めに購入して冷凍保存しながら食べるというファンもいるそうだ
パン販売の日はこのマークののぼりが立ちます

特に蔵王の素材を使った天然酵母の食パンは人気のようで、予約をしないと買えないほど。さんけさんが作るその天然酵母はりんご、にんじん、長芋、玄米などを使用しじっくりと発酵させた「楽健寺酵母」と言われるもので、それで作った食パンはぎゅっと詰まっているのだが、軽くレンジで温めると不思議なくらいふんわりとした食感になり香りも良い。

さらに最近ではさんけさんの元にパンを買いに来る人のアドバイスを受けて犬用のパンも作り始めた。人もわんこも一緒に食べられるパン作りはさんけさんの脳を刺激するようだ。

人もわんこも一緒に食べられる「わんパン」(要予約)
楽健寺酵母を使用した食パン
(左)砂糖を使用していないのにほんのり甘みを感じるてづくりあんこのご褒美あんバターサンド
(中央)豚ひき肉にきのこ、ダイズミート、を加えつなぎにお米をつかったハンバーガー
(右)解毒作用のある竹炭を練り込んだ手作りのバンスに高タンパク質なハンペンをサンド

「おばちゃんだから」が口癖になっているさんけさんだが、お話をしていると、会話の中にヒントを見い出し、色々な物を生み出そうとするその意欲を垣間見ることができた。きっとこれからもさんけさんの創作意欲は枠もなくどんどんと広がってゆくのだろう。(取材:NAOKO)


さんけ(本名:武田ひろみ)
1959年生まれ 矢本町出身
測量の会社で図面を書く仕事に携わりながら32歳の時に日本画を描き始める。
様々な美術展で入賞するも、立体に目覚め球体関節人形を作り始める。
創作活動に意欲的に取り組む一方、バイクでのツーリングを楽しむアクティブな一面も。
現在は造形作家と天然酵母のパン職人の二刀流。
屋号の「さんけ」は矢本で言われていた三毛猫をさす言葉。
ARCHE!主催「ペットフェス2024秋」出店予定

SANKE BAGEL
【住所】蔵王町遠刈田温泉字小妻坂79-69
【電話番号】080-1681-3766
【営業日】ベーグル販売 水曜/食パン販売(要予約)木曜 ※わんこパンは要予約にて木曜販売
【営業時間】11:00~15:00

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