年末年始、120時間無休寝ずに診察する、移動アニマルクリニック「浜口純」獣医師だ。「動物病院が空いていないからやらざるをえないのよ」そう言う浜口先生は少しでも多くのペットの命を救えるならと「SASUKE」に挑戦する様な気持ちで、いまからモチベーションをあげている。
スーパービバホーム新名取店にて浜口先生が無料で健康診断をやってくれると聞いて愛犬を連れ行ってきた。
浜口先生とはペットマガジンARCHE! miyagiの第3号で紹介させていただいた往診専門の獣医さんだ。拠点を持たない移動クリニック。その先生が毎週土曜日だけは「そこ」にいる。先生への興味と4歳になった愛犬の健康状態が気になってそこに行ってきた。
ビバホーム店内の奥の方にペットコーナーがありその一角に診察室?がある。少し早く着いたので置いてあった無料健診のチラシに目を通す。ペット全般…犬・猫・ウサギ・ハムスター等何でも健診してくれるらしい。ただし、鳥類以外。苦手なのかな??
健康診断と便検査もやってくれると書いてある。イラストの先生が優しい顔で何でも相談してね、と言っている。浜口先生にお会いするのは初めてだがARCHE!の3号に載っていた写真のイメージとだいぶ違うな~笑。
無料健診の時間になった。さぁ愛犬よ、しっかり診てもらいなさい、と診察台の上へ。体重良し!心音良し!歯の状態良し!垂れたお耳も問題なし!
良かったー。
体重はまぁ大丈夫だろうと思ってはいたが聴診器をあてられた時は少しドキドキ。最近逆くしゃみが多いから呼吸器に何か疾患でもあるんじゃないかと気になっていたが問題ないようだ。
歯も問題ないと言われてほっとした。最近歯石が付き始め歯磨きを頑張らなきゃ!とクロスでやってみたり歯ブラシでやってみたり歯石が取れるとかいう液体を飲み水に混ぜてみたり…試行錯誤してやってはいるが直接歯に触れてケアすることが上手にできずにいた。しかもうちの愛犬は歯が全部生えそろってはいない。ネット情報によると小型犬によくあることらしいが犬歯から奥歯の間がほぼ生えてこなかった。
だから生えてきた歯を大事にしなきゃと思うのだがなかなか…。唯一、寝る前の歯磨きガムだけは愛犬も喜んでカミカミしてくれる。
そんな状態だったのですごく気になっていたのだが「丈夫な歯だ、大丈夫。」と先生に言われとても安心した。そして私が歯磨きに四苦八苦しているのを見ていたかのように「頑張っても犬歯ぐらいしか磨けないでしょ」と。犬歯は食べるという行為では殆ど使われない歯だから、大事にしなきゃならないのは奥歯。歯磨きが難しければ歯磨きガムを毎日噛ませるのでもいいのだと教えていただきとても気持ちが軽くなった。
だが・・・パテラ(膝蓋骨脱臼)に関しては思っていた以上に悪いようで10tの石が頭上から落ちてきたようなショックを受けた。最近は痛そうにしないから症状が軽くなったのかなーなんてお気楽に考えていた。先生から愛犬の状態を説明され、つくづく反省。
愛犬よ、すまぬ!自然治癒するわけないよね。お散歩のとき一緒に猛ダッシュすると喜んでくれると思い毎日やっていたけど、これからは…もう4歳だしね、少し紳士的なお散歩を楽しもうね。
浜口先生から「他にも何か気になることは?」と聞いていただいたので色々と相談したのだが、ここは愛犬の個人情報ならぬ個犬情報なので割愛させていただこう。
見た目によらず(先生ごめんなさい)どんどんお話をしてくださる浜口先生。かかりつけのクリニックではなかなかこんなにお話を聞くことはできない。病気とまでは言えないようなことを獣医さんとお話することがはばかれるような気がして、なんとなく距離を感じていた私は浜口先生の歯に衣着せぬ物言いに親近感を覚えた。
ビバホーム店内で「無料」で健康診断をやってくれるという点になにやら怪しさを感じる方にお伝えしたい。別に何か売りつけられるわけでもオプションで有料検査を強いられるわけでもないのでご安心を。ただ、浜口先生の言葉を素直に受け入れる心の準備だけお忘れなく(笑)。
そんな浜口先生。年末年始は移動アニマルクリニックを無休にするという。具体的には12月30日(水)の朝6時から翌年1月4日(月)の朝6時まで、夜中だろうが明け方だろうが大晦日も元旦も全く関係なくそこに苦しんでいるペットがいれば駆けつけてくれるというのだ。この年末年始の『120時間完全無休訪問診療』は今年で7年目になるという。
眠くならないように食事もとらず、ゆっくりとお風呂につかることもせず、ひたすら病気やケガをしたペットのいるご家庭へ往診に出る。浜口先生曰く、この期間は普通の人間であることを捨てた「SASUKE」期間なのだそうだ。遠方からも助けて欲しいと電話がなる。緊急性のある場合も多い。待たせられない。
普段の往診であれば順路立てて効率よく訪問していくのだがそんな事を考えている余裕はない。飼い主さんが藁をも掴むような気持で電話をしてくるのに応えたい。苦しんでいる犬や猫、その他のペットたちを少しでも助けてあげたい。しかし往診ではできることに限りがあるから精一杯の応急処置をして提携先の病院に送ることもある。それでも飼い主さんたちに感謝されるとやりがいを感じるという。役に立っているのだという自負にもつながる。これが浜口先生の原動力となるようだ。
始めた頃はそんなに需要がなかったらしい。いや、需要がないのではなく知られていなかっただけだった。ここ数年、先生の存在が知られ始めるとそれに伴い来てほしいと電話が多くなるようになった。
年末年始の診察はほとんどが新規の患者となるペットたち。病気であればそれまでの症状や薬の情報が欲しいがなかなか全部は手に入らないので診察に時間がかかる。そうしている間にも他の所から助けてほしいと電話がなる。断れない。ほかに頼るところがないから電話してきたのだから。自分がなんとかしなければ。だから寝てられない。限界なんか感じていられない。ただただ助けに走るだけ。
―――なぜ不眠不休で一人でそこまで頑張るのか。―――
答えは簡単だった。“その時期診れる獣医がいないから”
浜口先生は往診専門の診療を始める前、夜間緊急診療の病院に勤めていた。ある年の大晦日。28件の患者が病院に来た。だがそこにいるのは浜口先生ともう一人の獣医師だけ。緊急手術も入り待たされている患者はその間にバタバタと死んでいったという。まるで野戦病院のように。そんな事態を経験したからこそ独立した浜口先生は年末年始120時間フル稼働で診療に出向く。
浜口先生は言う。
こんな最悪な状況を作り出しているのは他ならぬ獣医師、動物病院だ。こぞって年末年始ですからと当然のごとく病院をお休みにする。でも病気は待ってくれない。もちろんかかりつけとなっている動物病院は通っている患者さんに休みの間必要な薬を出したり注意事項を説明したりしているだろうが急変することだってある。元気だったペットが突然具合悪くなることだってある。
そんな時に頼れる獣医師がそこにいない。
獣医師会に対し思うところがある。動物病院の地域連合を作り、当番の病院は年末年始のお休みをずらすようにすることぐらいできるのではないのだろうか。それができれば苦しみながら長い時間待たされる動物たちも、不安ばかりで何もできない飼い主たちも救えるはずだ。救える獣医師がいるのだから、当番を持ち回りにして何年かに1度、正月返上で動物病院をあける。それくらいできるだろう。そういうことを獣医師会がとりまとめてやってくれれば・・・。
年末年始、頼れる動物病院が増えるまで意地でも浜口先生は『120時間完全無休訪問診療』をやめないだろう。
★移動アニマルクリニック浜口
予約080-4405-0196(受付6:00~22:00)
※年末年始は12月30日朝6:00~翌1月4日朝6:00まで受付
ホームページ/ animal-hamaguchi.com
★獣医師によるペット無料健診
スーパービバホーム新名取店内(ビバペッツコーナー)にて
(取材 ナオコ)
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