強い女性に出会った。

ハキハキと話す彼女の勢いは止まらず、メモを取ることさえ忘れて話に引き込まれていく。

13年ほど前から地域猫の保護活動をしているという犬飼玲子さんが初めて猫に触れたのは、ご主人が連れて帰ってきた1匹の猫だった。それはとても小さく今にも鼓動が消えそうな瀕死の子猫だった。すぐに動物病院に連れて行き、その後も献身的に看護した。その甲斐あって元気になった子猫は盲目だったためレイ・チャールズから名前を取り「レイ」と名付けられ犬飼家に迎えられた。

得意分野を活かし建設的な保護活動を考えている玲子さん

結婚後、青葉区の花壇地区に住んでいた玲子さんが川沿いを散歩していると、近所のおばあさんが泣いているのに出くわした。その人はいわゆる餌やりさんで地域猫にご飯をあげている女性だった。声をかけると彼女が可愛がっている三毛猫が同じく近所に住んでいる人に目の前で袋に入れられ、さらに殴られ、どこかに連れていかれたという。捕獲されて連れて行かれただけではなく、殴られていたと聞き、玲子さんはざわめきを覚えすぐにその猫を助けるため、動物管理センターに連絡し、特徴と状況を告げ連れてこられた猫はいないか確かめる。すると次の日その捜している三毛猫は管理センターに収容されていたという連絡がきた。ただしその猫は既に死んでいた。

TNR~捕獲して不妊手術をしたら元の場所に戻す~という言葉や活動をそのおばあさんは知らず、増えた猫が集まり周りからは猫屋敷と呼ばれていたという。猫を連れ去ったという人はどんどん増える猫に嫌気がさし、そこにいる猫を捕まえて撲殺したのだろうか。しかしどんな理由があろうともそんなことが日常に起こる出来事としてあってはならない。このことがきっかけで玲子さんは地域猫の本格的な保護活動を始めることとなった。

住んでいた花壇地区は地域猫が多かった。かわいそうだからと餌を与えるだけではどんどんと増えてしまう。増えたことでバランスを崩すと猫と人間の幸せな共生は破綻する。だから今そこにある猫の命を大切にし、一代限りにするTNR活動や飼い主のいない猫を減らす保護活動などの必要性を訴えるとその時の地区会長を始め、多くの人が理解を示し、協力してくれるようになった。そして花壇地区は動物管理センターから地域猫活動のモデル地域に認定されるほど活発に活動が行われていった。

2022年の12月、玲子さんが飼っていた保護猫のシャーが毒殺される。シャーだけではなく、他にも殺された猫が相次いで見つかった。玲子さんは弱い命が不自然に絶たれたことや体内から毒物が検出されたことを何度も警察に訴えた。当時報道でも花壇地区の猫の不審死に関して取り上げられたので記憶に残っている人も多いのではないだろうか。

玲子さんの精神的ショックは大きく、悲しみとぶつけることのできない怒りでしばらく仕事も手に付かない苦しい状態が続いた。だがそんな玲子さんを税理士として関わっていた顧問先の人たちは暖かく見守り続け支えてくれたのだそうだ。

そして玲子さんは立ち上がった。このままでは何も解決しない。自分が自ら前へ進み猫たちを守らなければならないと。殺されたシャーや他の猫たちの死を無駄にしないように、弱い者がいじめられる社会を無くそうと動き出したのだ。

保護猫たちに囲まれてシャーを抱く玲子さんの絵

そんな聞くに堪えない経験をした彼女から1枚の絵を見せてもらった。虹のかかる空の下、猫を抱いて愛おしそうに見つめている女性の絵だ。この女性は玲子さん自身でその腕の中にいるのは家族だった飼い猫のシャー。そして周りにはシャーと同じく殺されてしまった6匹の猫が描かれている。この絵は玲子さんが天寿を全うして虹の橋のたもとへ行ったとき、シャーや他の猫たちに喜んで迎い入れられるためにも今ある時間を無駄にせず、同じような許されぬ行為がおきないように、精一杯命を使わなければならないという、玲子さんの思いが表現されている絵だった。

地域猫の保護活動を継続可能にするために必要な資金をビジネスで獲得する仕組みを考えた玲子さんは「株式会社Star Platinum(スタープラチナ)」を設立。青葉区を中心に大町、上杉、五橋、北目町に4棟のテナントビルを一気に建設。そして「猫がいるオフィス」として展開し、そのテナント料で得た利益は全て猫の保護活動に還元する。

猫のいるオフィスが実現可能なスタープラチナのテナントビル

猫と一緒に入れるテナントビルの他に、全室猫と暮らせるアパートも建てた。それらには爪を研いでも剥がれない壁や、オシッコをしても撥水加工により汚れない床などを使用し猫との共生に配慮した。

「何も一度にやらなくても、テナントビルを1棟やってみて軌道に乗ったら次の1棟とやって行けばいいのではないか」という意見もあった。普通に考えればその方が安全だと思うが、玲子さんにはそんな時間はないという思いが強かった。救わなければならない命はたくさんある。一年後には消えてしまうかもしれない命だ。だから今、できる限りのことを精一杯やる。そしてこれらが軌道に乗ったら今度は保護猫施設を建てて、そこに介護施設を併設しそばに猫がいる生活で利用者の心に光を灯したい。

テナントビルの1階「ねこのいるオフィス」 建築部門のモデルルームとして実際に保護猫を住まわせている

「スタープラチナ」では「猫のいるオフィス」や「猫と暮らすための内装」を請け負う建築部門の他、動物と共に過ごせる職場環境のプロデュースやバックアップを行うために公認会計士や弁護士、税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士など、動物がらみの法律にも詳しい専門家で構成している士業部門などを展開している。他にも猫グッズの販売や軽貨物運送業も行っており、これら全ての業務で得た利益は保護猫の食費や医療費などに充てられる。

玲子さんの活動に賛同している株式会社Star Platinumの仲間たち

また玲子さんの活動は仙台市内に留まらず、殺処分ゼロを国会で訴えかけている串田誠一氏のいる参議院議員会館に出向き、猫の虐待を防止する方策について自身で検討した内容を直接報告するなど多岐にわたっている。

動物愛護議連事務局次長の串田誠一氏と会談

さらに、昨年玲子さんは歌手デビューも果たした。シャーが亡くなった2年後の命日に『この手は』というタイトルの曲をシャーの名前でリリースした。歌詞にはシャーや小さな命への思いが込められており、自分の手で少しずつでも助けていくという決意がメロディーに乗せられている。

税理士としてだけではなく、猫の保護活動のために起業してテナントビルを運営したり、歌を出したりしている玲子さんを快く思わない人もいる。中にはネットで好き勝手に誹謗中傷を書き込む人もいるそうだ。だが自分に向かって放たれるそういった心無い言葉に玲子さんはひるまない。

むしろ花壇であった猫の不審死のことが風化して人々から忘れられてしまう事、さらには同じ過ちが起きてしまう事の方が恐ろしい。

今回玲子さんの話を聞いて、覚悟を決めた人は強いと思った。

気持ちに体はついてくる。きっと大丈夫。これから仲間と手をつなぎながら、たくさんの思いを成し遂げていくのだろう。
(取材:NAOKO)

Apple Musicより配信中

株式会社Star Platinum 代表取締役 犬飼玲子
1977年生まれ、東京都出身。東北大学大学院経済学研究科卒業。祖父の介護のため29歳で仙台市へ移住。結婚後は「犬飼&パートナーズ税理士法人 犬飼玲子行政書士事務所」にて税理士、行政書士としての職務を遂行する傍ら2023年地域猫保護活動のために起業。翌年歌手デビューも果たす。好物はツナ缶。

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