宮城県内だけで年間1500件以上も、野良猫や地域猫、多頭飼育などに関する相談や通報、そして苦情が保健所や動物愛護センターに寄せられている。またマスメディアでも独居高齢者の多頭飼育崩壊が取りざたされている。高齢者ではなくても、また家族と暮らしていても、知識不足と無責任なやさしさが不幸な猫を増やしているのが現状のようだ。そして実はこれ、割と身近でおこっている問題なのだ。

「TNR」という言葉、この記事を読んでくれている多くの人は知っていると思うが改めて説明すると、TNRは飼い主のいない猫に対して行う行為で「捕獲し(Trap)、不妊手術をして(Neuter)、元の場所に戻す(Return)」という活動を指している。TNRを終えた猫はその印に耳先をV字にカットされるのでさくら猫とも呼ばれている。これらの活動は今そこにある猫の命を大切にし、新たな命が生まれてこないようにすることで人間と飼い主のいない猫の幸せな共生を目指している。

特に猫は繁殖力が強く、交尾の後に排卵するため高確率で妊娠し、一度に3~6匹の子猫を出産する。しかも生後半年も経てば繁殖できるようになり、メス猫は1年に2~3回の発情期を迎える。近親交配もするのでたった2匹のオス・メスの猫からあっという間に何十匹と増えていく。

ネズミ算式に増えていく野良猫

家の中で飼っていなくても野良猫に餌を与えて可愛がっていたらいつの間にかその地域が猫だらけになっていたなんていう話も耳にする。一度増えたらその数が自然に減ることはなく、糞尿による悪臭被害の他、食料を求めてごみをあさったり、車に傷をつけたりするなど人間社会に被害を及ぼすようになる。また猫社会の中でも猫同士のけんかや病気の蔓延、飢餓によりオス猫が子猫を食べるなど残酷なことが起き、更には人間が殺処分しなければならないということになり、人にも猫にも幸せな未来はやってこない。

それらを解決するためにTNRは最も有効な活動なのだが、同時にとても大変な活動でもあるのだ。

飼い主のいない猫を捕獲して動物病院に連れて行かなければならないこと、病院では一度に多くの猫の手術はしてもらえないこと、そして何より手術にお金がかかること、これらの負担が活動している人たちに重くのしかかっている。

そんな問題を少しでも解決するため、にじのはしスペイクリニック宮城分院が2025年5月に誕生した。

車内で手術ができる移動手術室

このスペースで短時間で手術を終わらせる

展示車両の中では実際の手術の様子が流されていた

にじのはしスペイクリニック宮城分院は宮城県内及び近隣県のどこにでも出向き、車両の中で手術をする飼い主のいない猫の不妊去勢手術専門の移動式の病院だ。オスなら10分、メスなら30分で手術が終わるので1日にたくさんの猫の不妊去勢手術が可能だ。術前検査、術後検査はしないので1回で完結でき、猫に及ぼすストレスも軽減。また月齢2か月から手術を行うことができ通常オスで20,000円、メスで30,000円位かかる手術代も県や仙台市のTNRの助成金を利用するのと同じくらい、もしくはそれ以下のオス6,000円、メス10,000円と安価なため費用的負担も軽減される。

以前保護猫カフェのオーナーから、保護した猫を1匹ずつ車で片道1時間以上もかけて助成金が利用できる動物病院まで行っていると聞いたことがある。

また保護活動をされているほとんどの人は仕事をしながら自分の時間とお金を使ってまさに身を削りながらそこにある命を守っている。

そういった人たちや、保護猫の多頭飼育崩壊予備軍の飼い主に、このにじのはしスペイクリニック宮城分院の事を知ってもらいぜひ活用してもらいたい。

にじのはしスペイクリニック宮城分院のスタッフ(左から真理子さん・院長 獣医師 聡子先生・獣医師 純子先生)

現在スタッフは3名。獣医師で保健所に勤務していた聡子先生。同じく獣医師で動物愛護センターに勤めていた純子先生。保健所で市民からの苦情などを直接受け現場に出向いていた真理子さん。それぞれ勤務先は違っていたが毎日相談や苦情に対応したり実際に殺処分に関わったりしていた3人は日々の仕事の中でどんなに対応しても全く減らない現状に根本的な解決策が必要だという共通の考えを持っていた。そしてそれを見出すため岐阜にあるスペイクリニックの本院を訪ねた。そこは2020年に過剰繁殖抑制を目的に開院した猫の不妊去勢手術の専門病院で、現在分院が全国に7カ所にできている。3人は本業とは別の所でボランティア的な活動をする参考にと考えていたのだが、しっかりと腰を据えて仕事としてきちんと向き合わなければならないことに気づかされる。そして本院を訪れた昨年の4月から1年で宮城分院を開院。開院までの間何度も岐阜へ足を運びノウハウや技術の向上などの研修を受け、今年の5月、始動した。

「不妊去勢手術へのハードルを低くし、増える前に手術をするという考えが当たり前になるように、そのツールとして移動式手術室『ニコワゴン』で県内中を走り回ります!」

立ち上がった三銃士ならぬ三獣師。不妊手術だけではなく、捕獲補助や地域・学校での啓蒙活動も今後どんどんやっていく予定だ。
(取材:NAOKO)

にじのはしスペイクリニック宮城分院
予約・相談はLINEにて受付 lin.ee/C0cBSHgD
【電話番号】050-1725-2484 ※手術中などは電話に出られないため可能な限りLINEで連絡をお願いします。
【定休日】不定休
【Instagram】https://www.instagram.com/2484miyagi/?hl=ja

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