黒板を彩る鮮やかな色彩。ダイナミックな動きの中にやわらかなグラデーションと繊細なタッチ。迫るような画風で花や生き物たちに命を吹き込むアーティスト──YUU.CONNECT(ユー・コネクト)代表の丹野優香(ゆうこ)さん。彼女が全身全霊を傾けて描くチョークアートは、観る者の心を奪い、魅了する。またセピア調のコーヒーアートでは、色の濃淡やにじみを活かし、ペットたちの可愛らしい表情をやさしく描き上げる。チョークやコーヒーなど、異なる画材でそれぞれの特性を用いて描く彼女の作品には、描くものの魅力を存分に引き出している。今、最も飛躍を遂げている熱いアーティストだ。

個展「巡りゆく季節をアートと共に」は、WARABIYA(わらびや)仙台榴ケ岡店の奥スペースで9月に行われた。香ばしいきな粉の香りに包まれ、とろけるように柔らかなわらび餅を味わいながら作品を鑑賞できる空間。そんな魅力的な場所を借りて彼女に話を伺った。

丹野さんは、自然あふれる長野県で育ち、幼い頃から生き物たちと触れ合い、絵を描くことが好きだったという。やがて衣装に関心を持ち服飾の高校へ進学。コンテストに入賞するなど、当時からアーティストとしての能力を発揮していた。その後、専門学校では理容を学び、床屋を営む両親と同じ道へ進んだ。同じく床屋の家系に育ったご主人とご縁があり、宮城塩釜の地へ―。ご主人と共に理容「髪匠」の仕事に励むようになる。床屋の仕事の傍ら、黒板でポップを描くようになったことがアーティスト活動を始めるきっかけとなる。「当時はコロナ禍で、外出を控えないとならない時期でした。カットをしながら少しでも楽しんで頂けるようにと、夫の発案でコーヒー屋さんなどのキッチンカーを呼ぶようになったんです。床屋×キッチンカーで看板を作成するのが、とても楽しくて無我夢中で描いていました」と微笑みながら振り返る。そんな中、描いた看板がSNSで話題になり、ラジオ番組で紹介されたこともあったという。

丹野さんの作品は、理容師としての経験と服飾デザインの感性を融合させた創造力に溢れている。幼き頃から両親がお客様の心に寄り添いながら喜ばせている姿を見て育った丹野さんは、どんな時も「人への想い」を大切にしている。仕上がった作品は、どれも繊細な感性と力強い想いに満ちている。独学で技術を磨き、描き続けているうちに依頼もどんどん舞い込むようになり、3年前にアーティスト活動を始動した。「事務所の壁画などの依頼もあり何時間も立ちっぱなしでしたが、夢中で描いていました。依頼主さんと一緒に作り上げている感覚がとても充実感がありました」と丹野さん。彼女の作品は、チョークアートの他、コーヒーアート、ペン画など、表現の幅を広げ、個展やワークショップの開催へとつながっていった。

「今回の個展では東京のイベントで四季をテーマに制作した『四聖獣』の作品も展示しています。自分の身長を優に超える大きなボードに描いたライブパフォーマンスは、私にとって初めての試みでした。どうしたら注目されるか考え挑戦しました。二日間かけて4枚を仕上げましたが、とても良い経験になりました」と成し遂げた達成感とさらなる挑戦に目を輝かした。四季折々の植物や生き物たちが、彼女の手によって黒地上に鮮やかに彩る力作で圧巻だ。また、アエルで一昨年の正月に展示されていた作品「干支」のチョークアート作品は7枚で1枚の絵になる大作も同時に展示。正月に合わせて干支を描いたという作品は、12匹の動物たちが躍動感を伴いイキイキと描かれ、その表情に吸い込まれそうになる。そのほか、動物モチーフのチョークアート、繊細で美しいペン画、香り立つようなコーヒーアート、アクリルで描かれた瓶の作品まで——個性豊かな作品が所狭しと並び、アートの宝箱のように輝いていた。個展と同時に「チョークアート体験」も実施。「子どもたちにアートの楽しさを味わってもらいたいと思い、ワークショップをしています。クレヨンに似ている質感のチョークを用いて、黒い板に自由に楽しんで描いてもらっています。チョークアートの良さは、間違えても失敗しても消せること」30~40色の中から、自分の感性で色を選び、混ぜたり重ねたり、指で伸ばすことで独特の質感を生み出す。黒板の深い黒が、色をより引き立て、普段できない貴重な経験に満足そうな姿が見られた。子どもたちの心が豊かになれる体験の機会を与えながら、逆に純粋な感覚や発想に驚かされることもあるという。

コーヒーアートの似顔絵は、イベント時のみ受注。春に行われた松島離宮のイベントでは、訪れたペットたちの似顔絵を描き、人目を引いていた。「喜んでいただける瞬間が、何より嬉しいです。亡くなったペットを描いてほしいというご依頼もあります。お気に入りの写真数枚を組み合わせて、この向きでこの一番良い表情で、と依頼されて描くことも絵だからできること」飼い主さんの想いを大切にしている丹野さんは、ご自身も犬を飼っていた経験もある。ペットは家族であり、人生の大切なパートナー。そんな存在を、一枚一枚丁寧に描き上げアートというかたちで残すことができる。丹野さんの想いと技術が詰まった一点もののコーヒーアートは、心に寄り添う贈り物でもある。使用するコーヒー豆は、焙煎不良などで商品にならない欠点豆を画材として再利用しているが、調合の仕方により色合いも異なる。コーヒーの自然な色合いの濃淡、手描きのやわらかなタッチはペットたちの表情を優しく、ノスタルジックに描き出す。毛並みや瞳の輝き、仕草の愛らしさがコーヒーの色味で表現され、写真とは違った温もりを感じるアートだ。「セピア色の中にうちの子の色を重ねて、涙が出ます」と言われた時、心から嬉しいと感じ「一杯のコーヒーを飲むように日常に寄り添って、コーヒーアートも楽しんでいただければ」と丹野さんは話す。

丹野さんが生み出す作品の数々に共通して言えるのは、植物や生き物たちの表情や感情が伝わってくるかのようにキラキラしているところだ。「生き物の目にはその命が込められているんです」という通り、その描かれた瞳の奥からにじみ出るような輝きと静かにじっと見据えるような落ち着きがある。「絵を書くときは自分もその子と同じ表情をしながら描くんです」と、本当に描くことが好きだという気持ちが作画からありありと伝わってきて、感銘を受けた。

「人に受け入れてもらえるような生活の一部になれるような作品。お花みたいに飾って、気分が上がるとか、誰かに送って言葉以上の想いが伝えられるような作品を作って行けたらな、と思っています」“花を飾るように絵画を飾ってほしい”その願い通り、作品には色とりどりの花があしらわれ、様々な植物や果物などが組み合わされている。「絵の中に入れるモチーフは、依頼者の色々な想いを全部絵に入れ込みましょう! と、可能な限りたくさんの想いを汲み取っております。絵を誰かに頼む機会は、特別な時であり、好きなものって人によって、いっぱいあると思ので、一枚の絵として一緒に作りあげたという風に喜んでもらえたら」と、作品に込められた様々な想いを一つの形として創り上げている丹野さん。そこからは、「人の想い」、そして「生き物の命の温もり」が宿り、見るたびに新しい発見と伝わってくる想いがある。 「ご依頼に合わせて、描く素材を選び制作しています。アートを通じて人に寄り添い、心が豊かになるお手伝いができるよう心がけています。今後もそんな活動ができれば」とまっすぐな瞳に、底から湧き上がるエネルギーを感じた。

児の母でもある丹野さんは、理容師一家である夫のサポートがあって、アーティスト活動をしている。「夫の家族に支えられ理解してもらえて、協力を得られていることに感謝の気持ちでいっぱいです」と彼女の瞳は潤んでいた。チョークの柔らかさ、コーヒーの香り、子どもたちの笑顔──それらすべてが、彼女のアートを形作っている。「多くの方に喜んでいただける作品を作れたら」という願い。床屋さんとアーティストの根本は一緒だ。巡りゆく季節の中で、変わらないものがあるとすれば、それは「誰かを想う気持ち」なのかもしれない。YUU.CONNECTこと丹野さんの作品は、今日も誰かの心にそっと寄り添い、優しさのかたちを描き続けている。


丹野優香(たんの・ゆうこ)
1991年生まれ。塩釜在住。
塩釜、多賀城、仙台を拠点に2021年からアーティスト活動を開始。チョークやコーヒー、ペン画等の技法を用いた作品を制作。個展やグループ展、ワークショップを開催するほか、企業とのコラボ制作等も行う。東京ビックサイト「デザインフェスタ」へ出品・ライブアートパフォーマンスに挑戦するなど、活動の場を広げている。

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