昨年の9月から本格的に動き始めたNPO法人 ふるれっと。代表の石田正臣さんにお話を聞きに活動の場でもあるご自宅にお邪魔をしてきた。玄関から入ると人懐っこく元気いっぱいの犬たちが迎えてくれた。この犬たちはブリーダー崩壊などからレスキューされてきた保護犬で新たな飼い主が見つかるまでここで生活をしている。
ここではレスキューした犬をケージにいれるのではなく、おうちの部屋を開放して他の犬やお世話をする人と一緒にすごさせる。そのためかとても人懐っこく悲しそうな目や怯えた表情をしている犬はいなかった。
NPO法人ふるれっとは保護犬を新しいおうちとなる里親さんへ繋ぐ活動の他に、ブリーダーとしての顔も持つ。そしてそれらの活動に関わる仕事を「就労継続支援B型」という福祉サービスを用いて、障害者など雇用契約を結ぶことが難しいとされている人たちと共に行っている。このような形でペットに関する就労支援をしている団体は仙台では初めてのケースのようだ。
この福祉サービスの元では働いている障害者は「利用者」と呼ばれる。また対価である賃金は「工賃」となる。現在の全国の就労継続支援B型における1か月の平均工賃は16,000円に届かないそうだ。あまりの低さに驚くが利用者に支払われる工賃は出来高制でなおかつ、長時間労働や毎日の出勤が体力などの問題で不可能な利用者が多いため、平均額はこのように低額になっているそうだ。
ふるれっとでは利用者に主に繁殖犬や保護犬のお世話をしてもらう。おうちで犬を飼っているように犬のトイレやお部屋のお掃除、しつけや運動の補助などをしてもらうわけだ。そしてふるれっとがブリーダーとして得た売上げから経費を除いた分を利用者に工賃として分配している。その金額は全国平均工賃の倍以上となっているそうだ。一生懸命に命を預かる仕事をしているのだからそれに見合った金額を渡そうと石田さんは考えているようだ。
初めは犬に触ったことのない利用者も、石田さんをはじめスタッフからお世話の仕方を丁寧に教わり徐々に慣れていく。そして「お世話をする人がいなければこの犬たちは幸せになれない」ことを学び、責任感と愛情をもって接するようになっていく。利用者の中には毎日電車やバスを乗り継ぎ、遠くからお世話に来てくれる人もいるそうだ。
そうやってお世話をしていくうちに利用者それぞれにお気に入りの犬ができるのだが、その犬に里親が決まりふるれっとを卒業することになっても悲しいとか寂しいとかいう言葉を口にする人はいないそうだ。むしろ、幸せになれるおうちが決まって良かったと喜び送り出してくれる。保護宅にいるよりも家庭犬になることの方が犬にとって幸せだということを学び理解しているのだろう。
このふるれっとの活動に理解を示し応援してくれている人も徐々に増えているようだ。里親希望の声は宮城県内に留まらず全国各地から寄せられる。
一般的に保護犬の里親になるには年齢制限や家族構成など色々と条件がつきものだが、ふるれっとでは高齢者や単身者でも里親になることができる。面談をし(遠い場合はリモートで)犬を大切にしてくれるかどうかを確認し、あとはふるれっとのある青葉区新川まで迎えに来られるかどうかがポイントとなる。さらに言えば家庭犬になった後も時々写真を送ってもらえればそれでいい。そういうスタンスでこの活動を始めてまだ日は浅いが、遠く北海道や愛知、熊本などからも保護犬をお迎えに来てくれているのだそうだ。
石田さんはふるれっとを犬たちの「実家」的存在にしたいと考えている。昨年、全国各地に送り出した犬たちの里帰りイベントを開催し、予想以上の反響に手ごたえを感じたそうだ。里親さん同士が集まって交流できる機会。ブリーダーから巣立った子たちの兄弟に会えるかもしれない機会。そんな機会を楽しみにしてくれているふるれっとファミリーの輪がどんどん広がっていくことに期待している。
そして全国から集まってきた里親さんたちとふるれっとの利用者との交流も両者にとって良い刺激となるに違いない。
石田さんは今後も色々と計画があるようだ。犬だけではなくすでに始めている野菜の栽培の他に羊の飼育や養鶏、アート製作などふるれっとを中心に障害を持つ利用者の経済的支援と社会との繋がりを大切に育てていこうと考えている。
そしてこの活動を仙台から発信し全国に広まることを願っている。
(取材:NAOKO)
NPO法人 ふるれっと
理事長 石田 正臣
【住所】仙台市青葉区新川字佐手山5-607
【電話番号】080-6016-1208
【事業所指定番号】0415103175
【開所日】月・水・木・土・日
【開所・作業時間】10:00~16:00
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