仙台の氏神、中田神社での撮影現場に現れたワッキー貝山さん。自身のアイコンともいえるビンテージガチャ『コスモス』書体の真っ赤なTシャツを身にまとい、はじけるような笑顔。驚かされるのは、その場にいるすべての人を巻き込む「陽」のエネルギーだ。スタッフや通りがかりの子供たちはもちろん、散歩中の犬までもが一瞬で彼と打ち解けてしまう。ゲストという立場に甘んじることなく、軽快なトークで周囲を沸かせるその姿。そこには、単なるタレントとしての枠を超えた、サービス精神という名のプロフェッショナリズムが息づいている。

読者の皆様にとって、彼はアルシュのイベントを盛り上げる名物MCであり、爆笑をさらうイントロクイズの仕掛け人、そして「仙台のお笑い芸人」として馴染み深い存在だろう。しかし、その多才な活動の背景には、表に見える姿だけでは語りきれない深い奥行きがある。

せり鍋の名店『佗び助』を切り盛りし、多くの客を笑顔にする母の背中を見て育った。テレビやラジオで見せる軽妙な語り口の裏側には、映画や舞台で磨き抜かれた確かな演技力と、一人の表現者としての静かな厚みが同居している。ガチャガチャ研究家として、そしてマルチタレントとして。彼がこれほどまでに人々を惹きつけ、最前線を走り続けるのはなぜか。見慣れた笑顔の奥に秘められた『情熱の源泉』――。知っているようで知らなかった、ワッキー貝山さんの多才な魅力に迫る。

表現者としての原点は、10代の頃にさかのぼる。引っ込み思案な少年を、表現の世界へ導いたのは、母の存在だった。19歳で『劇団麦』の門を叩き、井上ひさし氏脚本の舞台や、今井雅之氏演出の『THE WINDS OF GOD』に出演。役者として着実にキャリアを積む中で、彼は「お笑いのベクトルで芝居をしたい」という新たな欲求を抱いた、大学を卒業後、サラリーマンの道に進みながら、吉本興業のオーディションに出る決意をする。

そして、1994年、吉本興業所属の「ワッキー貝山」が誕生する。昼は仙台で会社員として働き、夜には銀座7丁目劇場の舞台に立つ。翌朝にはまた仙台へ戻る――。ダウンタウンや桂三枝といった錚々たる顔ぶれが並ぶ劇場で、「売れた気にはなるけど、売れる気はしないなぁ。」自問自答しながら、過酷な二拠点生活を2年続けた。

その後、銀座7丁目の幕引きと共に立ち上がった、仙台吉本の立ち上げの話をきっかけに、帰郷。仙台フォーラスのサンクホールで生放送のお笑いライブ、出張吉本仙台夕焼け劇場など、仙台で若手のお笑い芸人が活躍する番組に力を入れた。自身も出演者として舞台に上がりながら、東京の舞台で活躍してきた先輩として、若手の育成にも携わる中で、彼の「プロデューサー」としての才能が開花。伝説のお笑いライブ『旬物』では、ロンドンブーツ1号2号やバナナマンをゲストに迎え、地元の底上げに奔走した。

「自分が面白いと言うよりこの子面白いよ!と紹介する方が自分に合っている」
プロデューサーとしての自分を発掘できたこの時期。この気づきが、後に続く多くの才能を見出す土台となった。

その過程で出会ったのが、当時まだ無名だった『サンドウィッチマン』だ。彼らのお笑いへの情熱と義理堅さに惹かれ、ワッキー貝山さんは彼らを支え、導いた。現在のサンドウィッチマンのスタイルがあるのはワッキーさんの影響に他ならない。今もなお、彼らがワッキー貝山さんを「兄さん」と呼び、恩返しを続けている姿は、ファンが彼らに感じる「優しさ」や「誠実さ」の源流を見ているようだ。地元の先輩に仁義を通し続けるその関係性は、仙台のお笑いシーンにおける美しい伝統となっている。

芸人としての活動や、司会者としてテレビやラジオ、映画出演とマルチに活動する中、ワッキー貝山さんのタレント人生を大きく揺るがす転機が訪れる。

2011年の東日本大震災だった。愛弟子、サンドウィッチマンさんとの交流の最中、自身も慰問を切望していたその時、ガチャガチャだけはたくさんある。と、被災地の子供たちのためにガチャガチャを用意。すると、無我夢中で走ってきた子供たち。ガチャを回す瞳の輝きを見たとき、彼は自身も救われ、この文化と真正面から向き合う覚悟を決めた。

ワッキー貝山さんを語る上で欠かせない、彼の原点であるガチャガチャ収集。それは単なる趣味の領域を遥かに凌駕している。始まりは7歳の頃。友人が捨てたハズレのカプセルを拾い集め、洗って乾かすのを日課としていたいた少年時代。小学校卒業時には、すでに3万個のコレクションを数えていたという。

「集めて増えていくと、仲間が増えてる感じがしていいなと。今もそんな気持ちが蘇ってきちゃうんだよね」

そんな中でもこだわって収集・研究をしているのは『コスモス』のビンテージガチャ。ワッキー貝山さんのグッズの書体にも垣間見えるコスモス愛。

「ニッチなものが好きなんだよね。コスモスって全てがニッチ。カプセルの中にカプセルが入っているとか。笑。どうやって遊ぶんだろ、みたいな」

コスモスに関する単行本を3冊出版するほどの熱量。未だに探し続けているお気に入りにガチャもある。編纂した単行本のページをめくれば、失われゆく時代を複眼的に捉えた、壮大な歴史のアーカイブがそこにある。

そんなガチャの数は現在11万個。池袋サンシャインシティでの個展でも話題となったが、彼のこだわりは「カプセルのまま保存する」ことにある。それはモノとしての価値以上に、その時代の空気感を真空パック保存したいという、研究家としての執念だ。

かつては「サブカル芸人」と括られることを避けていた彼を変えたのは、奇しくも『コップのフチ子さん』などのブームで子供が楽しむための、荒さが目立ったガチャガチャが、サブカル的な要素も含み、一気に精度も上がった「トイカプセル」として再評価される時代背景も重なり、彼は一気に唯一無二の存在としてスターダムへ駆け上がった。時代の変遷とともに、彼の持つディープな知見は、メディアや『開運!なんでも鑑定団』などの専門性の高い場へと活動の幅を広げていく。

そのコミュニケーション能力の真骨頂は、意外な場所でも発揮される。イベント会場の『射的ブース』だ。セレクトされた景品の妙と、一瞬で通りすがりの人々を虜にする至高のトーク。モノの魅力を言葉で増幅させ、その場を純粋なエンターテインメントへと昇華させる鮮やかな手腕に、大人も子供も夢中になり、笑顔になれるのだ。

さらに、この頃、山形の歌謡曲番組に主演している中で、自身の趣味である音楽収集をイベントでの盛り上げアイテムとして、調査対象にしたのが、イントロクイズだ。
今でこそワッキー貝山さんM Cのイベントの名物と言える『イントロクイズ』だが、それもまた幼少期からの音楽研究と膨大なアーカイブの賜物だ。かつて、自宅で独りマイ・ベストテンをランク付けしていたりと楽曲調査を怠らなかった日々だった。わずか0.5秒で楽曲を判別させるストイックなこだわりがある。膨大な音源がある。その一方で、音楽に疎い層への『配慮』も忘れていない。動物の鳴き声や日常的に耳にする電子音を織り交ぜる遊び心は、自らを「イントロクイズDJ」と称する彼ならでは。

『演歌のイントロを流すと、おじいさんたちが10歳は若返るんだよ』。
そう笑う彼のステージには、ガチャガチャにも通ずる知識量とサンプル数、そして思い出の追体験と競争心、『親子の対話』が共存している。コレクターとしての深い知識と、場を掌握する演出家としての視点。その二つが溶け合うからこそ、ワッキー貝山さんのイントロは面白いのだ。

「全部繋がっているんですよ。ガチャの漫談も、イントロクイズも、基本は人とのコミュニケーション。その経験が、役者としての表現にも深みを与えてくれるんです」

仙台を面白くしたいという純粋な原動力。自分が表舞台に立ち続けることで、若い世代の励みになりたいと願う。いつになく真面目なトーンで語る彼の横顔には、表現者としての誇りが宿っていた。

「次はね、鑑定イベントをやりたいんですよ」

全国を周り、査定してほしいおもちゃを鑑定するのだが、彼が知りたいのはモノの市場価格ではない。そのおもちゃにまつわる、持ち主の思い出話だ。読者からかけられた「卒業アルバムを見て知らない友達を思い出した感じ」という言葉に感銘を受け、エピソードを語り合う場を作りたいのだという。

モノより思い出。一つひとつの対話を大切に積み重ねてきたワッキーさんらしい、夢

11万点という膨大なコレクション。けれど、ワッキー貝山さんが本当に集めてきたのは、そのカプセルの数だけ存在する「誰かの笑顔」と、時代が置き忘れていった「純粋な記憶」なのかもしれない。

かつて、ハズレのガチャを拾い集めていた少年の手は、いまや東北のお笑い界を支え、被災地の子供たちに希望を届け、そして大人たちが忘れかけていた「あの頃のときめき」を呼び覚ます大きな手となりました。役者としての深み、芸人としての瞬発力、そして研究家としての執念。そのすべてが「人とのコミュニケーション」という一本の線で繋がっているからこそ、私たちは彼の周りに集まり、吸い寄せられるように笑顔になった。

次は「鑑定イベント」で、おもちゃに宿る思い出話を語り合いたい。そう語るワッキーさんの視線の先には、常に「人」がいる。市場価値ではなく、その人の人生の価値を照らそうとするその試みは、きっとまた多くの人の心を救うはずです。

「インチキおじさん登場、と思ってもらってイジられたい」とおどけて見せるが、彼の人生の核にあるのは、愛娘の名前にも込めた「笑う」という言葉。

「笑う」を人生の真ん中に置いている。

その真っ赤なTシャツと笑顔で、私たちの日常に変わらない遊び心を届けていく。積み上げてきたガチャガチャの数字よりもさらに大きく進化していくのだ。

タレント ワッキー貝山
1970年仙台生まれ仙台育ち。地元劇団、吉本興業所属、サラリーマンを経て、98年にフリー独立。ローカルを基盤にテレビやラジオほかマルチに活動。ビンテージガチャ収集家、杜の都のカプセリスト。アルシュのイベントMCとしても大活躍中。

文/Photo 那須川薫(Photo 一部 ワッキー貝山・編集部)

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